松枝尚嗣/堀井覚司公式サイト『松枝屋東京店』

日: 2014年10月14日

ふんど

うーん…。いろいろ悩む…。

たまたま、BSでやっていた「君よ憤怒の河を渉れ」って映画を観ました。1976年公開の日本映画です。初見。
ちなみに、なじみのある「ふんぬ」じゃなく「ふんど」と読ませます。呉音じゃなく漢音読みですね、別に間違いじゃないですよ。

いや、間違いはこの映画そのものなんですけどね(笑)。
今回そんなことを書くとします。レビューです。

言っときますがこの作品、高倉健に原田芳雄を主演に据えた、西村寿行原作のれっきとした大作映画です。
政界の陰謀に巻き込まれて濡れ衣を着せられてしまった検事である主人公が、追っ手から逃れながら事件の真相を探っていくハードなストーリーなのです。まあバイオレンス満載の西村寿行っぽさはあまりないですけどね、そこはそれ、大作なんでマイルドに。
ただし、なのです。監督が“あの”佐藤純彌ですからいただけません。いつものやっつけテイスト満載です。松枝はこいつの映画は「新幹線大爆破」しか認めませんからね。

それはともかく。
何が間違いかって、それはもう数限りないのですが、とはいえこの作品、それらがどれもこれもすっとぼけていておかしくて、いつもの佐藤作品としてはなかなかの味わいかもしれません。

導入は悪くないです。
たたみかけるように事件が進展し、物語に引き込まれます。
が、主人公が上司の検事正に証拠を突きつけられるシーンでの会話、このあたりから雲行きが怪しくなります。
「杜丘(主人公)くん、君はなぜこんなことを!?」
「検事正!私は…」
「聞きたくないっ!」
…いや気持ちとしては決して間違っちゃいないんですけどね、「なぜ」って聞いといて「聞きたくない」の流れは爆笑してしまいました。「おかしかったら笑え!」「はっはっは」「何がおかしい!?」みたいで。
こういう、どこか詰めの甘ーいシーンがぞろぞろと現れ、徐々にストーリーなんかどうでもよくなってくるのです。

また、ヒロインの初登場が、“熊に襲われそうになっている”のはいいとしても、“樹の上にしがみついている”ってどうなんですか。
普通の感覚だったら「それ絵ヅラ的に違うよね?」ってなるところですがこの映画ではそのまま行ってしまいます。別にドジっ娘ヒロインじゃないですよ、社長令嬢ですよ(笑)。
一方の襲っている熊もご同様、「ピープロかよ!」ってくらいの着ぐるみだったりします。まあワンシーンだからいいか…と油断していると、なんとその熊、意外なタイミングで“また出てきます”。
いかんせん人が入っているせいか必要以上の存在感(笑)があるので、伏線というよりちょっとしたレギュラーみたいです。一瞬「熊、味方フラグ?」とかありえない勘違いしちまいましたよ。特撮の見すぎです(笑)。

主人公が行く先々でみんなが都合よくかくまってくれたりするのはお約束なのでいいにしても、追い詰められてそれを突破する方法がいちいちあとは野となれの強行突破なので逆に爽快感もありません。“免許もなくセスナを操縦する”のは百歩譲るにしても、“自衛隊機をまく”はやりすぎでしょうに。
あ、でも“新宿に馬群”は圧巻でよかったかも。もっとも、テンションは“そこだけ”で、なんら全体に作用しませんけど(苦笑)。そういう計算はしないんですよね、うん。

とどめは真相です。なんと終盤に来て不思議アイテムが登場するのです。謎薬です。キーアイテム…ってほどでもないですけど。
社会派サスペンスかと思ってたらSF?みたいなちぐはぐさが、そのままラストの原田@刑事の暴走で追い討ちをかけるので、もう何が正しかったのか悪かったのかもよくわかりませんでした。
ラスボス西村功の扱いも監督お得意のやっつけだから、最後の最後のカタルシスがまったく足らないんですね。ダメダメじゃん。

ああそうだ、忘れてはならないのが劇伴です。
オープニングこそなかなかなのですが、全編に流れるご陽気な音楽の合わないこと合わないこと!
名曲「第三の男」のテーマの失敗アレンジのような緊張感のないスチャラカスコアは必聴です。
演出家のせいなのか作曲家のせいなのか…もうこうなると共同正犯でいいかもしれません。まとめてしょっぴけい。


いやー、当時の時代の空気をさっ引いても、やはり“珍作”でした。
だって、当時でも鑑賞に堪えられる作品は山ほどありますからね。これが中国で大ヒットしたってんですから世の中不思議です。まったく。

“演出”ってのは、“作品全体の空気をコントロールすること”だとざっくり思っているのですが、そこに頓着しないから“こうなって”しまうんでしょうかね。
ストーリー上の破綻を“演出”でねじ伏せてしまえる力量、こだわりがないのなら、それならまずシナリオの穴を丁寧に塞いでいくべきなんでしょうにねぇ…。
そんなことを考えてしまう映画でした。

…おっと、どれだけ伝わるんですかね、この文章で(苦笑)。

……ともあれ

2時間返せー!

午前2時58分

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